沿海地方国立絵画廊

  • 写真: 沿海地方国立絵画廊
  • テキスト: リャチェンコ・オレーシャ

アレウツカヤ通りの沿海地方国立絵画廊は、伝統的に沿海地方美術の「柱」や「基本」と認識されています。ここは曖昧なインスタレーションや超最新のパフォーマンスの場ではなく、全ての展示会は開催に先立つ企画段階で国立美術館独自の専門的な選定が行われています。しかし「国立イコール退屈」というわけではありません。地方予算からの補助金や個人寄付のおかげで、融資、計画的な運営、展示品や建物の保護・保存、またオーナーや相続人からの寄贈や購入によるコレクションの拡大・充実が保証されています。この価値あるコレクションの形成は20世紀の30年代に始まりました。トレチャコフ美術館、プーシキン美術館、エルミタージュ、美術アカデミー博物館などの中央の画廊の所蔵品がソ連国家の法律によって地方美術館へ分配されたのです。社会主義リアリズムが主役であった当時は、文化の継承や伝統との断絶を宣言する前衛主義や非協調主義は迫害されていましたが、地方美術館に分配されたおかげで、これらの多くの絵画は全滅や消失の運命を免れることができました。

現在、画廊の常設コレクションにはロシアや西洋美術の所蔵品250点があります。マーク・シャガール、ワシリー・カンディンスキー、リュボーフィ・ポポーワ、ウラジーミル・レベジェフ、ロベルト・ファリク、アリスタルフ・レントゥーロフ、アレクサンドル・クプリーン、ピョートル・コンチャロフスキー、ヴァレンティン・セローフ、イヴァン・アイヴァゾフスキーなどの世界的に有名な画家の作品は日本人愛好家を魅了するにちがいありません。この絵画廊の所蔵品で名高い作品はシャガールの「マンドリンとブラザーダビデの肖像画 」(1914年)とカンディンスキーの「即興」(1913年)でしょう。

「マンドリンとブラザーダビデの肖像画 」(1914年)「マンドリンとブラザーダビデの肖像画 」(1914年)
カンディンスキーの「即興」(1913年)カンディンスキーの「即興」(1913年)

抽象絵画創始者であるワシリー・カンディンスキーの「即興」は国際アート市場において特別の価値があり、定期的にイタリア、ベルギー、ブラジルなどの外国で展示されています。この作品はトレチャコフ美術館から分配された後競売にかけられるはずでしたが、奇跡的にその運命を免れました。沿海地方の住民や観光客はこの絵画が海外ツアーから戻るたびに、常設ホールでそれを鑑賞しています。

「マンドリンとブラザーダビデの肖像画」(段ボール、グワッシュ、グラフィックス)は保管や展示上の条件によって3ヶ月以上続けて展示することはできず、定期的に展示からはずして休ませる必要があります。ウラル地方以東の美術館で唯一のシャガール作品であるこの絵画には、この画家の第一次世界大戦で足を奪われた弟が描かれています。シャガールには妹は大勢いましたが、弟は一人しかいなく、彼に対して愛情を持ち、いくつかの肖像画を描きました。傑作品は70年前にトレチャコフ美術館からこの絵画廊に収蔵され、それ以来、ドイツ、米国、フィンランド、イスラエル、イタリア、オーストリア、日本、スイスで展示され、沿海地方国立絵画廊を世界的に有名にしました。

西洋美術の所蔵品については、「聖母と赤ん坊」(画家不明、原始ルネサンス14世紀)、ヤコポ・バッサーノの「羊飼いへの告知」、ティツィアーノの「悔悛するマグダラのマリア」(複写)、ジョバンニ・パオロ・パンニーニの「廃墟の風景」などが挙げられます。

この絵画廊は日本との国際交流も活発に行っています。書道や浮世絵展以外に、特殊プロジェクト「倉吉絣」(キュレーター:福井貞子)、小杉春見とイリーナ・ミクルシェフスカヤの共同展示会(水彩画)、日本の聖像画家の山下りんの展示会が開催されました。沿海地方国立絵画廊の所蔵品は、町田、宇都宮や函館の美術館で開催された「極東ロシアのモダニズム1918-1928」特別展にも出品されました。

当画廊の所蔵品には沿海地方美術派の作品も多数あり、その発展や支援にも特別な注意が払われています。沿海地方美術派の特徴として、鮮やかな色彩、沿海地方の素晴らしい景色に触発された風景画の多さ、アジア的なモチーフと色彩の組み合わせが挙げられます。

沿海地方と縁がある有名なアーティストについて言えば、先ずはデュッセルドルフ美術アカデミー卒業生の有名なカール・カリについて述べずにはいられません。沿海地方の印象主義の先駆者として需要な役割を果たしてきた悲運の画家は沿海地方の出身ではありませんが、1911年から長い間沿海地方に住んで、地元の風景をよく描いていました。現在、画廊にはロシアや日本の収集家から寄贈された巨匠の作品9点が所蔵され、とりわけ独特な「女性の肖像画」も含まれています(画家は風景画を専門にしていた)。

アレウツカヤ通りにある画廊は今年50周年を迎えました。約10年にわたる改造が終わり、展示スペースのキャパシティが大きくなり、一品展、共同展、個人展、アート・プロジェクト、古代ロシアや18世紀-20世紀ロシアのアート展など様々なスタイルの展示会を主催できるようになりました。ツアーガイドもご希望に応じて提供されます。ロシアでは最近の傾向として、アート市場への興味が高まっており、モスクワの市民がヴァレンティン・セローフ展を鑑賞するために長い列に並んで待ったりしています。我々ウラジオストク市民も日本人の観光客に必ず沿海地方国立絵画廊に立ち寄ることをお勧めしています。その時、もし運が良ければ「ブラザー・ダビデ」が展示されているかもしれません。

Aleutskaya ulitsa, 12
火-日、11:00–19:00 、月:休館
primgallery.com

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