テキスト:モズゴヴォイ・イワン

子供の頃にプラレールで遊んでいた大人の夢の実現

ウラジオストク鉄道駅舎は、その名のとおり、世界一長い鉄道・シベリア鉄道の終点とも始点ともいえるウラジオストク市の中心部にあります。 同駅舎の西側は、駅前広場とアレウツカヤ通りを挟んだ公園に指差している姿のレーニン像があり、その指はちょうどう日本の西海岸を指していますが、「日本車を買ってくれ」とか「一度でもいいから、日本に行って来い」とかの意味を込めているかもしれません。

一方、駅舎の東側は、路線等を挟んだところにフェリーターミナルがあり、駅舎とは約200メートルの横断歩道橋でつないでいますが、境港からフェリーで来る観光客等は直接にウラジオストク駅にアクセスできるメリットが大きいです。

ウラジオストク鉄道駅舎の建設は、1981年(明治24年)5月19日、シベリア鉄道と同時に始まりました。また、いずれの着工式には日本からの帰り道でウラジオストク市を訪れたロシア帝国の最後の皇帝であるニコライ2世も参加しました。

駅舎は2階建ての建物で、1階には長距離列車のチケット売り場や乗客待合室、2階には短距離列車や郊外電車の乗客待合室や食堂がそれぞれありますが、2階の待合室の天井には19世紀の帆船や聖バシリイ大聖堂等、シベリア鉄道が結ぶウラジオストク市とモスクワ市の19世紀末の風景が再現されています。

また、駅舎は石造りの建物、国産の建材のほか、日本製の粘土板やオランダ製の暖房も用いられており、その一部は今でも使われています。

ウラジオストク鉄道駅舎や駅構内に設置された時計や電光掲示板の表示は全て現地時間ではなく、モスクワ時間に設定しています。なぜならば、ロシアは10以上の時間帯に分割されており、各駅においてそれぞれの現地時間を用いると運行管理が乱れる可能性が高くなるため、ロシア国内の全駅の表示はモスクワ時間に合わせられたからです。ちなみに、ウラジオストク市とモスクワ市との時差は7時間ですが、現地の時間を7時間戻すとモスクワ時間になります。

ウラジオストク鉄道駅舎とモスクワ市のシベリア鉄道終始点であるヤロスラフスキー駅舎は建築上の共通点が以外と多く、両駅舎の建設が同時に進められたのではなかいとさえ思われますが、実際、ウラジオストク鉄道駅舎の着工がヤロスラフスキー駅舎の着工より20年前に始まりました。

ウラジオストク鉄道駅舎の近くに蒸気機関車のモニュメント及びシベリア鉄道の長さ9288キロが表示される「キロ・ポスト」があります。蒸気機関車は開通の20世紀明けの頃から路線の電化が始まった1950年代までに使用されていましたが、電気機関車の普及に伴って後退しました。また、モニュメントとして展示された蒸気機関車は、第2次世界大戦の時に米国において製造されており、当時のソ連への輸入後はシベリアやソビエト極東から前線への軍人や物資の運送に使われていました。一方、上記の「キロ・ポスト」はウラジオストク市にもモスクワ市にもありますが、後者のヤロスラフスキー駅舎において表示される長さが9298キロと、10キロもの差がありますが、ウラジオストク鉄道駅舎の「キロ・ポスト」に刻んだ数値の方が正確です。尚、運賃計算に用いられる長さは9298キロで、乗客よりも鉄道会社の方が益を得る形となっています。



ウラジオストク鉄道駅舎の1階の出口の近くに19世紀の小さい鐘が吊りかかっていますが、100年前に発車等の合図を伝えるために使われていました。あなたもその鐘を鳴らせばいかがでしょうか。