ジャズという音楽はウラジオストクにとても似合うと思います」
ウラジオストクで一番有名な日本のジャズ・ミュージシャンの岸ミツアキ氏

記者:リャチェンコ・オレーシャ

岸さんがウラジオストクで今まで数回演奏したことがございます。ウラジオストクの観客プロフィールを特定出来ますか?
ウラジオストクには2003年から今まで6回(2003年、2004年、2006年、2010年、2011年、2015年)伺っていますが、コンサートには老若男女を問わず、いつもたくさんの方々が来てくださいました。初回のコンサートに来てくれた当時13~14歳だった少年が、大人になってまたコンサートに来て「あなたの演奏がきっかけで音楽に目覚めて、今ではバンドを組んで頑張っている」とわざわざ言いににきてくれたことがあり、嬉しかったのを覚えています。

私の音楽はジャズですが、ジャズにも色々な種類やスタイルがあります。私は「アコースティック」が基本身上で、マイクで音を大きくするのではなく、なるべく自然な「生の音」を大切にします。そのため繊細なところも多いのですが、ウラジオストクのお客様はそういうところは静かに聴いてくれて、一曲一曲演奏が終わった後は大きな拍手、コンサートが終わったらスタンディング・オベイション・・・と、すべてのコンサートが本当に素晴らしいオーディエンスだったという印象です。

毎回ウラジオストクの演奏が決まった瞬間に何を感じていらっしゃいますか?またどんな気持ちをもってウラジオストク行き便に搭乗しますか?
ウラジオストクに行けることが決まるたび、いつも本当に嬉しく、飛行機に乗る時は「最高のコンサートやライブをしたい!」という気持ちで搭乗しています(笑)。
岸様にとって、ウラジオストクを訪問する価値がある理由を5つぐらい教えて頂けますか?
  1. ウラジオストクの皆様に「岸のジャズ・ワールド」に触れていただき、演奏を聴いていただけることが一番嬉しいです。
  2. ステージ以外でウラジオストクの皆様、またウラジオストクのミュージシャンの方々と交流できることも嬉しいです。
  3. ロシアのトラディショナル・ソング(民謡など)はジャズにアレンジしてもフィットするものが多く、ウラジオストクを訪れる際には毎回一曲はロシアの曲をジャズにアレンジしています。そのアレンジしたロシアの曲を他の色んな所でも演奏して紹介できることは価値があると思っています。
  4. 日本人にとってロシアはいまだに「近くて遠い国」という部分があるかもしれず、博物館などを訪れてロシアの文化に触れて、私が感じたことを日本の人々に伝えることはとても大切なことだと思っています。
  5. 本場のロシア料理が楽しめるのも嬉しいです(笑)。
ウラジオストク市の一番重要な観光資源、富、メリット、宝物は何になりますか?
たくさんの観光スポットはもちろん素晴らしいのですが、ミュージシャンである私はフィルハーモニック・ホールなど、内部の装飾などに歴史を感じる音楽ホールの数々は当然ながら宝物のように感じています。しかし何よりも、平和で心温かいウラジオストクの皆様のお人柄が一番の宝物ではないでしょうか!
岸様ご自身のウラジオストク訪問のご印象は? 特定の場所、人間、建物、飲み物、地元の食べ物、レストラン、観光スポットなど感動されて、記憶に残った事・物など何でも結構でございます。
初めて伺った時は日本からとても近いのに、街並みがヨーロッパ的に感じて、全く日本と違うことに非常に驚きました。

ウラジオストクの人々の親切さ(プリクラスニィ リュージ!)やホールの美しさはもちろんですが、レストランのロシア料理もすべて美味しく、毎日ロシア料理をリクエストしたのを覚えています。私は素晴らしい食文化の街・東京に住んでいて様々な国々の多彩な専門料理店が数多くありますが、ウラジオストクを知った後は日本でロシア料理店に入ることが多くなりました(^_^メ)

また展望台から見た金閣湾の美しさや潜水艦C-56博物館・・・他にも数々の博物館が印象に残っています。
様々な年齢の日本人の観光客には、ウラジオストクに行けば絶対試さないといけない事・物・経験などをお勧め出来ますか?
まずはお洒落な街の風景を楽しんでほしいし、ロシア料理や音楽ホールでの演奏会もぜひ経験してほしいですね。

展望台からの景色もバツグン! マトリョーシカを買うのはその後でも大丈夫かな(笑)。
ウラジオストク市が未だにそこまでの日本人の観光客を集めていない理由は?
以前はビザ取得の問題が一番で「ロシア訪問は観光でもビザが必要なのでめんどうだ」との印象が強く、今もその影響が残っているように思います。また宣伝不足なのか、ウラジオストクの知名度の問題も大きいと思います。日本人にとってすぐに思い浮かぶロシアの都市と言えばモスクワやサンクト・ペテルブルグって感じですね・・・。日本も京都は世界的に有名ですが、奈良は素晴らしい国宝や文化があっても海外からの観光のお客様にはあまり知られていません。ウラジオストクも同様で、これだけ素晴らしい街で日本から近いのに、日本人観光客が少ないのはもったいないと常々感じています。
ウラジオストクは都市として、ブランドとしてどんな連想を引き起こしていますか?これこそがウラジオストクっぽいと言えることは何になりますでしょうか?
金閣湾沿岸に発展した港町であり、古くから日本との関係も深い都市という印象です。初めて訪れた時、車体に日本語がかかれたままの日本車がいっぱい走っていたのには本当に驚きました(笑)。
ウラジオストクが人間であれば、どんな性格を持っていますか? 音楽作品であれば、何に当てはまるのだろうか?
私はウラジオストクに6回行っていますが、正直言うとほとんどの時間はコンサートの音楽のことで頭がいっぱいで(笑)参考になる意見かどうか分りませんが、ウラジオストクを人間の性格に例えるなら、港町ということもあり「大らかで大胆な中に繊細さを持っている」ように感じています。

音楽はポップス系はもちろんクラシックも根強い人気があると思いますが、先ほどの「大胆ながら繊細」という印象の部分を考えると、即興という自由で大胆な芸術性の中にも愛や悲しみを表現し、繊細でノスタルジックな一面を持つジャズという音楽はウラジオストクにとても似合うと思います。
ウラジオストクがユネスコに文化遺産の登録を申し込むとすれば、恐らくどんな物になりそうですか?見所、名所?
金閣湾は自然遺産となるかもしれないですが、名所であり見所だと思います。
ロシア西部の大都会モスクワとサンクト・ペテルブルグをウラジオストクと比べたら、何が本格的に違いますか?
実はモスクワもサンクト・ペテルブルグも行ったことがないので、残念ながら違いは分らないです。外務省から依頼された初めてのロシア・ツアーの時(2003年)、極東4都市6公演(12日間)の後にサンクト・ペテルブルグ訪問も要請されたのですが、私の日程がどうしても取れず、しかたなく断念しました。
ウラジオストクをまだ訪れたことのない見込みの日本人の観光客にこちらで伝言を残して頂けますか?
日本から数時間以内のフライトで行ける韓国や香港、タイなどにたびたび行っていますが、このような国々とウラジオストクが決定的に違うのは、日本から12時間以上かけて行かなければいけない「ヨーロッパ」を感じることができる点です。

日本から2時間半のフライトで行ける上に時差もほとんど無く、街並みを見ただけでお洒落さを感じられ、文化や食べ物も良い意味での「違い」を楽しめる都市は他にないと思います。

ボリジョイ スパシーバ!